縄文時代(約五千年前)の大きなムラの跡である山内丸山遺跡(青森県)が全国的な話題となったのは、つい最近のことです。クリなどの食用植物の栽培も行われていたようで、「縄文人のくらしは狩猟採集」といった、いままでのイメージを大きく変えたといわれています。
こうした遺跡の発掘調査は、毎日のように新聞紙上をにぎわしていることからもわかるように、青森県だけではなく全国各地で行われています。もちろん、私たちの千葉県も例外ではなく、なんと毎年500件もの発掘調査が行われているのです。
皆さんの家の近くでも、発掘調査が行われているかもしれません。青いビニールシートが目立つところは要注意です。
千葉県は三方を海に囲まれていることから、絶好な自然環境に恵まれ、全国で最も多い二万三千か所もの遺跡が知られています。県内の台地上は、いたるところが遺跡といってもいいでしょう。
その一方では、首都圏に位置している関係から、土地開発事業も数多く行われています。事業予定地内にある遺跡が現状のまま残せない場合には、工事前に発掘調査が必要となりますので、調査件数が多くなるのも当然といえるでしょう。
私の仕事が文化財に関係しているからか、県民の方々から、「どうして発掘調査が必要なのですか」という質問をよく受けます。そのようなときには、ついつい「文化財は国民の共有の財産だからです」と、かたくるしく答えてしまいます。
しかし、改めて考えてみますと、遺跡は私たち現代人にさまざまなことを語りかけています。そこで、佐倉市にある国立歴史民俗博物館館長の佐原眞さんが書かれていることを参考にして、いくつかの事例を紹介してみることにしましょう。
大昔の人々は現代人に比べて、非常に健康な歯をもっていました。
約一万年前の土器の出現によって、ヒトは煮炊きを覚えました。食べ物が殺菌されることによって寿命はのびましたが、やわらかくなり、歯で噛む回数が減りました。使わない器官は衰えていきます。
遺跡から発見されるヒトの骨をみると、時代が新しくなるに従って下顎が細くなっています。そのために、歯が生える場所も狭くなり、現代人の歯の本数は、本来の32本から28本に減ってしまいました。虫歯も比較にならないほど多くなっています。
長い間、ヒトと暮らしをともにしてきた犬も、同じような傾向を示しているといわれています。
このことは、幼児のころから、堅いものを食べ、よく噛む習慣が、歯を丈夫にする早道であることを、私たちに教えているのではないでしょうか。
ヒトは文明の発達により自然をこわすほど、花を愛するようになりました。
大昔の人々は、草や木を、薬や食料として、さらには季節の目安として、自然のままに利用してきました。しかし、身のまわりに、植木鉢・盆栽・活花など人工の花は置きませんでした。花は、ごく身近な自然のなかに咲いており、その必要はとくになかったのです。
花はすぐに朽ちてしまいますが、花粉はそのままの形で末永く残ることができます。地中に長く眠っていた花粉は、私たちに警告しています。色鮮やかに品種改良された現代の花は、自然破壊の裏返しではないかと。
きれいな花を見て、けっして手放しではよろこべません。
その他にも、直下型地震の原因となる活断層の発見など、遺跡は、私たちの生活に役立つ多くのヒントを与えています。
皆さんも、発掘調査現場に行ってみてはいかがでしょうか。必ず、なにか新しい発見があるに違いありません。
(佐久間豊)
完