四街道ボーイスカウト体験記 by たに くみこ


Kumi'sだいあり
 

(資料提供:マイルストーン

「僕はどうして学校で友達ができないんだろう……」

 去年のお正月休みが過ぎたころ、高学年になってもやんちゃでチョッピリ自己中心的な次男のトオルがいつになく真剣だった。そして何を思ったか夫はこんな提案をした。

「ボーイスカウトに入ってみたらいいんじゃない?」

 家族にも親戚にも関係者はいない。何も知らなかったが、夫の教え子に隊員がいたので、とにかく体験入隊してみることにした。

 1月の活動はロープワークだった。教えられた活動場所めざして、集合住宅のすぐ脇の細い道を、大きく回り込むように奥に入っていく。

「えーっ!? 四街道にこんなところが……」

 軽井沢の林の中と言われたら信じてしまいそうな小径を抜けると、そこは自然そのままの広い野原だった。

 トオルをおいて帰宅しても、ふざけて騒いでいるのではないか、人に迷惑をかけているのではないかと心配だったが、隊長さんの説明を思い出して気を静める。隊長さんはおおらかに

「よほど危険なことでもなければ基本的には自主的に活動をさせています。」

とおっしゃった。なるほど、中学生くらいの隊員を中心に、皆で何やら準備していたっけ…。

 迎えに行くとトオルは緊張した面もちではあったが、解散の会の時には隊員たちに混ざって並んでいた。嬉しそうな、恥ずかしそうな表情だった。

 2月の活動は耐寒訓練だった。あの「軽井沢」で野営するのだ。折悪しく雪のちらつく中、トオルは元気に「大丈夫だよ!」と自転車をくり出した。……へぇー、逞しくなったものだ。今度は、皿洗いはしたくないだの寒いだのと文句ばかり言ってひんしゅくを買っているのではないか……と、心配になるが、まあ何とかなるだろう。

 親も逞しくなっていたりして。

 

 

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缶トリー大作戦 wpe38.jpg (3991 バイト)   wpe3B.jpg (3376 バイト)   wpe3A.jpg (2663 バイト) 子供は元気

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 雪は一晩で相当積もり、迎えにいった方がいいかと懸念しているとき、「ただいま!」と玄関にトオルが倒れ込むように帰宅した。手足が冷たくて痛いと大騒ぎしたが、それよりも新雪の降り積もる裏道を、よくぞ自転車で帰って来た。チョッピリ感動。えらかったぞトオル。

「どうする? 続けられそう?」

「当たり前だよ、次の活動はスキーだもん!」

 スキーといっても話を聞くと、親と一緒に行くような快適な宿ではないらしい。うーん、大丈夫かなとまた心配。でも親の心配をよそに、トオルは知らず知らず変わってきていた。

……………………

 スキーのあとは桜の名所でもあるお寺の裏山で野草を採って料理するキャンプがあり、そして5月の活動は雲取山の登山訓練だった。

 この時は「超」過保護で「超」心配性の(この登山のあと、ようやく夫も私もそれに気付いたのである)親のせいで、トオルは大変な苦労をしてしまった。ただでさえ大柄で運動不足のトオルのリュックに、防寒具のたぐいを沢山詰め込んでやったために、彼は人の2倍もあるまさに「重荷」をしょい込んで初の登山を堪能?したわけである。

 山小屋でもらったという記念の品や、自分だけに買ってきたおみやげ(!)は大切な思い出のようだ。そしてカメラは持たなかったけれども、目の印画紙には頂上から見た広大な景色が焼き付いているに違いない。

 

 私はボーイスカウトというのは、折り目正しい生活習慣を身につけた人たちの紳士的な集団だと勝手に思いこんでいた。が、活動を通じてトオルが変わり、身につけてきたものは「自立心」や「たくましさ」「協調性」「シンプルイズベストの考え方」等々……、しっかりと自分の足で生き抜いていくための基本だったのかも知れない。

 

 昨年10月20日、日本ボーイスカウト四街道第二団の年次総会に出席した。年度の中途で仲間に入れてもらったので、初めての総会である。

 まず入隊上進式というのがあった。新しく入隊した隊員にチーフを授与したり、何隊の何班に属するかを伝達、任命したりする式である。千葉県でも数人にしか与えられない名誉あるバッジを授与された隊員がいた。

 それにしてもフレッシュなボーイスカウト隊員はさることながら、制服に身を包んだ大人の指導者たちの、なんとりりしくかっこいいことよ。あの方たちもお父さんだろうから、休日には家で寝転がってテレビを見たりもするのだろうが、そんな姿は想像もできなかった。

 幼稚園くらいの子はビーバースカウト隊、小学校低学年でカブスカウト隊になる。活動はハイキング、もちつき、歳末募金、工作、野草採取、水遊び、キャンプなどで、訓練というよりは楽しそう。

 高学年でボーイスカウト。オーバーナイトハイク、ロープワーク、耐寒訓練、スキー、登山訓練、鳥の捌(さば)き、県キャンポリーなどの活動。サバイバル訓練のような感じもしないではない。(?)

 ボーイ隊の上の年齢がシニア隊、その上がローバー隊である。

 保護者と雑談していて、「他の習い事は続かないけれども、ボーイ隊だけはやめるって言わないのよ」という声も聞いた。つまりは活動そのものが楽しいのだろう。そりゃそうだ、四街道にいながらにして、軽井沢みたいな場所で野営したりできるんだもの……。

 女の子でもボーイスカウトに入隊できるという話もちらっと聞いた。

 いつでも誰でも気軽に体験入隊できるということ(まさにトオルがこれだった)。あ、そうそう、今年は夏休みにアメリカ遠征もするそうだ。もちろん「野営」するのだろうなあ、映画に出てくるような場所で……?

 まあとにかく親も子も、それまで気付かなかったことを一年間で沢山体験させてもらったと思っている。

    ◆ ◆ ◆

後日談……そういえばいつの頃からか、トオルの部屋には学校の友達が何人も遊びに来るようになっていた。

('97.1月号〜3月号掲載)

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日本ボーイスカウト四街道第二団 連絡先:043−422−9175

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